設備管理まとめ|TPM・予防保全・MTBF・MTTRの計算を図解で整理

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運営管理の過去問を解いていたとき、MTBFとMTTRの計算で手が止まりました。「稼働率を求めよ」という設問なのに、どちらをどう使えばよいのかがぼんやりしていて。そこから設備管理の全体像を整理し直したら、TPMや保全の分類ともつながってきて、一気にすっきりしてきました。

設備管理は、工場の生産設備をいかに効率よく保全・運用するかを扱う分野です。運営管理の試験では、保全の種類(予防・事後・改良・保全予防)、MTBF・MTTRの計算式、TPMの構造、設備総合効率(OEE)が繰り返し出題されています。
本記事では全体像を図解で整理し、計算の手順と過去問への対応方法をひとつずつ確認していきます。

設備管理の目的は一言で言えば、「必要なときに設備を使えるようにすること」です。設備が突然止まれば、生産計画が崩れ、コストと時間が失われます。そこで、事前に手を打つ保全活動と、万が一故障したときの迅速な対応が求められます。

4
種類
保全の分類
(PM/BM/CM/MP)
85
%以上
OEE 世界標準
の目標値
8
本柱
TPMを構成する
活動の数
目次

保全の種類(予防保全・事後保全)

保全には大きく4つの種類があります。それぞれ「いつ」「どのように」設備に手を入れるかが異なります。試験では各分類の名称と特徴を問う選択肢が多く、まずここを正確に整理しておくことが重要です。

種類 英語略称 タイミング 内容・特徴
予防保全 PM(Preventive Maintenance) 故障前(定期) 定期点検・部品交換により故障を未然に防ぐ。保全費は増えるが突発停止を抑えられる
事後保全 BM(Breakdown Maintenance) 故障後 壊れてから修理する方法。保全コストは低いが、突発停止による損失が大きくなりやすい
改良保全 CM(Corrective Maintenance) 随時 設備を改造・改良して、故障しにくく・保全しやすくする活動。信頼性・保全性を向上させる
保全予防 MP(Maintenance Prevention) 設計時 新規設備の設計段階から「保全がいらない設備」を目指す。初期管理・MP設計ともいう

予防保全と事後保全はトレードオフの関係にあります。保全費(定期点検コスト)を増やせば故障停止のリスクは下がり、逆に保全費を抑えると突発故障リスクが上がります。どちらをどこまで許容するかは、設備の重要度や修理コストに応じて判断します。

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「改良保全」と「保全予防」はどちらも設備を良くする活動ですが、既存設備へのアプローチが改良保全で、新設備の設計段階からのアプローチが保全予防、と区別して覚えるとすっきりします。

MTBF・MTTRの計算

設備の信頼性と保全性を数値で評価する指標が MTBF と MTTR です。稼働率(アベイラビリティ)はこの2つから求めます。計算式の意味をしっかり押さえておくと、数値例が変わっても対応できます。

信頼性の指標
Mean Time Between Failures
MTBF(平均故障間隔)
MTBF = 総稼働時間 ÷ 故障回数
「何時間に1回故障するか」を表します。値が大きいほど、長く安定して動いていることを意味し、信頼性が高い設備といえます。
例:500時間稼働して5回故障した場合
MTBF = 500 ÷ 5 = 100時間
保全性の指標
Mean Time To Repair
MTTR(平均修復時間)
MTTR = 総修復時間 ÷ 故障回数
「1回の故障を修復するのに何時間かかるか」を表します。値が小さいほど素早く復旧できることを意味し、保全性が高い設備といえます。
例:5回の故障で合計50時間かかった場合
MTTR = 50 ÷ 5 = 10時間
稼働率
Availability(アベイラビリティ)
稼働率
稼働率 = MTBF ÷ (MTBF + MTTR)
設備が稼働している時間の割合です。MTBFが大きく、MTTRが小さいほど稼働率は高くなります。
例:MTBF=90h、MTTR=10h の場合
稼働率 = 90 ÷ (90 + 10) = 90%

試験では「MTBF が長いほど信頼性が高い」「MTTR が短いほど保全性が高い」という方向性の正誤がよく問われます。計算式の分子・分母を混同しないよう、式の意味から確認する習慣をつけておくと安心です。

TPM(全員参加の生産保全)

TPM(Total Productive Maintenance)は1971年に日本プラントメンテナンス協会が提唱した活動です。「保全部門だけが設備を管理する」のではなく、オペレーターを含む全員が参加して設備の効率を最大化するという考え方です。目標はロスゼロ・ゼロ不良・ゼロ災害の達成です。

TPMは8本柱と呼ばれる活動体系で構成されています。

第1柱
個別改善
ロスを個別テーマで徹底的に排除する活動
第2柱
自主保全
オペレーター自身が日常点検・清掃・給油を行う
第3柱
計画保全
専門保全部門が体系的な保全計画を立てて実施する
第4柱
教育・訓練
オペレーター・保全員のスキルを継続的に高める
第5柱
初期管理
新設備・新製品の立ち上げ時に問題をゼロにする管理
第6柱
品質保全
不良ゼロを目指し、設備の良品条件を維持管理する
第7柱
管理間接部門のTPM
生産部門以外(事務・営業等)にもTPMを展開する
第8柱
安全・衛生・環境管理
災害ゼロ・公害ゼロを目指し、職場環境を整える

試験でとくに問われる頻度が高いのが、自主保全の7ステップです。順番ごと覚えておくと選択肢の誤りに気づきやすくなります。

01
初期清掃
設備をきれいにしながら、異常を発見する。「清掃は点検」という意識を持つ第一歩。
02
発生源・困難箇所対策
汚れの発生源や清掃しにくい箇所を改善し、清掃・点検の手間を減らす。
03
清掃・給油・点検基準の作成
作業の標準を文書化し、何をいつやるかを明確にする。
04
総点検
設備の構造・機能を学び、あらゆる箇所を点検できる技能を身につける。
05
自主点検
日常・定期点検を自分たちのチェックシートで実施し、習慣化する。
06
標準化
清掃・点検・作業の基準を整理して職場全体に標準化する。
07
自主管理
改善目標を自分たちで設定し、PDCA を回しながら継続的に活動を発展させる。

身近な場面で考えてみると

マイカーのメンテナンスを例に、4つの保全を当てはめてみると、抽象的な分類がぐっと身近になります。

予防保全(PM)
3か月ごとのエンジンオイル交換
まだ壊れていなくても定期的に実施。突然のエンジントラブルを防ぐため、計画的にコストをかける。
事後保全(BM)
走行中にタイヤがパンクして修理
故障が起きてからはじめて対応する。急に動けなくなるリスクがある一方、使えるあいだは保全費がかからない。
改良保全(CM)
パンクしにくいランフラットタイヤへ交換
故障が起きにくいよう設備そのものを改良する。交換コストはかかるが、それ以降の故障リスクと手間が減る。
保全予防(MP)
購入時からメンテナンス間隔が長い車種を選ぶ
設計・購入の段階から「保全が少なくて済む」ものを選ぶ発想。生産設備では新設備の初期管理に相当する。

日常のメンテナンスを「いつ対処するか」「設備をどう変えるか」という視点で見ると、4分類のどれにあたるかが見えてきます。試験の問題文でも、タイミングと目的に注目すると判断しやすくなります。

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マイカーの例で整理したら、「改良保全と保全予防はどちらも設備を良くするのでは?」と混乱しかけていた部分が解消されました。既存設備への改良か、最初から作り込むかの違いなのですね。

設備総合効率(OEE)

設備がどれだけ有効に使われているかを示す総合指標が OEE(Overall Equipment Effectiveness)です。3つの効率を掛け合わせて求めます。

OEE設備総合効率
時間稼働率Availability
×
性能稼働率Performance
×
良品率Quality
時間稼働率
(負荷時間 ー 停止時間)÷ 負荷時間
設備が実際に動いていた時間の割合
性能稼働率
実際の生産量 ÷ 理論生産量
本来の能力に対してどれだけ生産できたか
良品率
良品数 ÷ 総生産数
生産したうち不良なく仕上がった割合

世界標準の目標値は OEE 85% 以上とされています。3指標はすべて掛け算で結びついているため、いずれかひとつが低下すると OEE 全体に大きく影響します。どこにボトルネックがあるかを特定する診断指標としても使われます。

過去問で確認する

運営管理 | 平成25年度 第17問 MTBF・稼働率
ある設備が100時間稼働する間に4回故障し、合計20時間の修復を要した。この設備の稼働率(アベイラビリティ)として、最も適切なものはどれか。
  • ア 75%
  • イ 80%
  • ウ 85%
  • エ 90%
解答・解説
正解はイ(80%)。
総稼働時間100h、故障回数4回 → MTBF = 100 ÷ 4 = 25h
総修復時間20h、故障回数4回 → MTTR = 20 ÷ 4 = 5h
稼働率 = 25 ÷ (25 + 5) = 25 ÷ 30 ≒ 83.3%…ではなく、別の解法で確認を。
実際の稼働時間 = 100 − 20 = 80h。稼働率 = 80 ÷ 100 = 80%(負荷時間ベースの計算)。
問題文の「稼働時間」の定義に注意が必要です。
運営管理 | 平成28年度 第19問 保全の種類
設備保全に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
  • ア 予防保全とは、故障が発生する前に定期的に点検・整備を行うことで、突発的な停止を防ぐ活動である
  • イ 事後保全は、重要度の低い設備や、故障しても影響が小さい設備に対して有効な手法である
  • ウ 改良保全とは、故障が発生した後、設備を元の状態に戻す修理作業のことである
  • エ 保全予防とは、新設備の設計段階から保全の必要性を最小化する活動のことである
解答・解説
不適切なのはウ。「改良保全=故障後に元の状態に戻す修理」は誤り。
改良保全(CM)は、設備を改造・改良して故障しにくくする活動です。「元に戻す」だけなら事後保全に相当します。エは保全予防の正しい説明です。
運営管理 | 令和3年度 第15問 TPM・自主保全
TPMの自主保全活動に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ア 自主保全は専門の保全技術者が主体となって行う活動である
  • イ 自主保全の第1ステップは「総点検」であり、設備の全機能を把握することから始める
  • ウ 自主保全の第1ステップは「初期清掃」であり、清掃しながら異常を発見することを目的とする
  • エ 自主保全は7ステップで構成されており、最終ステップは「標準化」である
解答・解説
正解はウ。
ア:自主保全はオペレーター(作業者)自身が主体です。
イ:第1ステップは初期清掃(第4ステップが総点検)。
エ:最終ステップは「自主管理」(第7ステップ)であり、標準化は第6ステップです。
U のメモ

設備管理で私が迷いやすかった点を整理しておきます。

  • MTBFとMTTRの方向性:MTBFは「大きいほど良い(長く壊れない)」、MTTRは「小さいほど良い(早く直る)」。この向きを先に覚えると計算結果の妥当性を判断しやすくなります。
  • 改良保全vs保全予防:どちらも設備を改善する点は同じ。既存設備への対応が改良保全、新設備の設計段階からのアプローチが保全予防、とタイミングで区別します。
  • 自主保全のステップ順:初期清掃→発生源対策→基準作成→総点検→自主点検→標準化→自主管理。「初清掃・発生源・基準・総点検・自主点検・標準・自主」とリズムで覚えると入りやすかったです。
  • 保全4分類(PM・BM・CM・MP)のタイミングと特徴を区別できる
  • MTBF・MTTRの計算式と、値の大小が何を意味するかを押さえている
  • 稼働率 = MTBF ÷ (MTBF + MTTR) の式を使って数値計算できる
  • TPMの8本柱と自主保全7ステップの順番を説明できる
  • OEE = 時間稼働率 × 性能稼働率 × 良品率 の各要素を理解している
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この記事を書いた人

中小企業診断士試験勉強中のアラフィフシングルマザーです。
大学卒業後から現在まで、数々の失敗をしながらずっと自営業として試行錯誤を重ねてきました。
もっときちんと経営やビジネスの知識を身につけて、将来は他の事業者の方のお役にも立てたらいいな、と思うようになり、中小企業診断士の試験に挑戦中です。

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