財務・会計の1次試験では、債券の利回り計算と株式の理論価格が毎年のように出題される。「現在価値の概念はわかるけど利回りの式が混乱する」という声をよく聞く。この記事では債券と株式それぞれの評価方法を、公式の意味から丁寧に整理する。
債券の基本構造
債券とは、発行体が投資家から資金を借り入れる際に発行する有価証券だ。満期まで定期的にクーポン(利息)を支払い、満期日に額面金額を返済する。
- 額面金額:満期時に返済される元本(例:100万円)
- クーポンレート:額面に対する年利率(例:3%)
- 満期(残存期間):返済までの年数
- 発行価格・市場価格:実際の売買価格(額面と異なる場合も)
- 市場金利が上昇 → 既存債券の魅力が低下 → 価格下落
- 市場金利が低下 → 既存債券の魅力が上昇 → 価格上昇
- 満期まで保有すれば額面で償還されるが、途中売却では価格変動リスクがある
- 残存期間が長いほど金利変動の影響(デュレーション)が大きい
債券の利回り|3種類の計算式
利回りとは「投資額に対して1年あたりいくら稼ぐか」の比率だ。試験では3種類の利回りが問われる。
直接利回り = 年間クーポン ÷ 購入価格 × 100
例:額面100円・クーポン3円の債券を95円で購入 → 3 ÷ 95 × 100 ≒ 3.16%
応募者利回り = (年間クーポン + (額面 - 発行価格) ÷ 残存年数) ÷ 発行価格 × 100
例:額面100円・クーポン3円・発行価格97円・残存3年 → (3 + (100-97)÷3) ÷ 97 × 100 ≒ 4.12%
最終利回り = (年間クーポン + (額面 - 購入価格) ÷ 残存年数) ÷ 購入価格 × 100
※ 応募者利回りと式は同じ。「発行価格」が「購入価格(市場価格)」に変わるだけ。
株式の理論価格|配当割引モデル(DDM)
株式の理論価格は「将来受け取る配当の現在価値の合計」として求める。これが配当割引モデル(DDM: Dividend Discount Model)だ。
株式の理論価格 = D₁ ÷ (r − g)
D₁:来期の1株当たり配当(D₀ × (1+g))、r:株主の要求収益率、g:配当成長率
例:今期配当100円・成長率2%・要求収益率7% → 100×1.02 ÷ (0.07-0.02) = 2,040円
株式の理論価格 = D ÷ r
例:毎年配当100円・要求収益率5% → 100 ÷ 0.05 = 2,000円
Rf:無リスク利子率、β:個別株のリスク係数、Rm:市場の期待収益率。βが高いほどリスクが高く要求収益率も上がり、理論株価は下がる。
株価指標|PER・PBR・ROE
| 指標 | 計算式 | 意味・使い方 | 試験ポイント |
|---|---|---|---|
| PER 株価収益率 |
株価 ÷ 1株当たり当期純利益(EPS) | 1株の利益の何倍の株価がついているか。成長期待が高い銘柄はPERが高い傾向 | PERが高いほど「割高」または「成長期待大」。同業他社比較で使う |
| PBR 株価純資産倍率 |
株価 ÷ 1株当たり純資産(BPS) | 純資産(解散価値)の何倍の株価か。PBR=1が理論的な下値の目安 | PBR<1は「理論上は割安」だが必ずしも買いではない |
| ROE 自己資本利益率 |
当期純利益 ÷ 自己資本 × 100 | 株主資本をいかに効率よく使って利益を上げているか。PER×PBR÷100でも近似可 | ROE = 売上高純利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジ(デュポン分解) |
| 配当利回り | 1株当たり配当 ÷ 株価 × 100 | 株価に対する年間配当の割合。インカム投資家が重視する | DDMの要求収益率(r)は「配当利回り + 成長率g」と解釈できる |
過去問で確認する
債券の利回りに関する記述として最も適切なものはどれか。
残存期間が長い債券ほど、将来のキャッシュフローの現在価値に対する金利変動の影響が大きい(デュレーションが長い)。(ア)市場金利上昇→債券価格下落(逆相関)。(ウ)直接利回りは購入価格に対するクーポンの割合。(エ)応募者は発行価格、最終は市場購入価格が分母。
配当割引モデル(定率成長)に関する問題。A社の当期末配当は1株200円、配当成長率は3%、株主資本コスト(要求収益率)は8%の場合、理論株価はいくらか。
P = D₁ ÷ (r − g) = 200 ÷ (0.08 − 0.03) = 200 ÷ 0.05 = 4,000円。問題文でD₁が直接与えられているか、D₀から計算するかを見極めることが重要。
PER・PBR・ROEに関する記述として最も適切なものはどれか。
PBR = 株価 ÷ 1株純資産(BPS)。PBR<1は株価が帳簿上の解散価値を下回っていることを示す。(ア)ROEが高くても株価は時価総額・市場環境で変動する。(ウ)PERが高いほど割高(または成長期待大)。(エ)配当利回りが高くても業績悪化や減配リスクを考慮すべき。
この記事のまとめ
- 債券価格と市場金利は逆相関。残存期間が長いほど価格変動が大きい
- 3つの利回りは分子の構造は同じ。割る分母(購入価格の種類)で区別する
- 定率成長DDM:P = D₁ ÷ (r − g)。D₁・r・gの3つを正確に把握する
- PERは「割高・割安」の相対判断に使う。PBR=1が解散価値の目安
- ROEはデュポン分解で「利益率×回転率×レバレッジ」に分解できる

