デリバティブ(派生商品)は、株式・債券・通貨・商品などの原資産から派生した金融商品の総称だ。先物・オプション・スワップの3種が代表的で、リスクヘッジ・投機・裁定取引の3つの目的で活用される。財務・会計の1次試験では基本概念と損益の方向性が問われる。
目次
デリバティブの種類と概要
| 種類 | 定義 | 特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| 先物取引 | 将来の一定時点に、あらかじめ決めた価格で原資産を売買する契約 | 売買双方に義務が生じる。取引所で標準化された契約(先渡は相対取引) | 価格変動リスクのヘッジ・投機 |
| オプション取引 | 将来の一定時点以前に、あらかじめ決めた価格(行使価格)で売買する「権利」を売買する契約 | 買い手は権利(義務なし)、売り手は義務を負う。プレミアム(オプション料)が発生 | 下落リスクのヘッジ・レバレッジ投機 |
| スワップ取引 | 将来の一定期間、異なるキャッシュフローを交換する契約 | 相対取引が中心。金利スワップと通貨スワップが代表的 | 金利リスク・為替リスクのヘッジ |
3つの目的:①ヘッジ(リスクを相殺して損失を防ぐ)、②投機(価格変動を利用して利益を狙う)、③裁定取引(市場間の価格差を利用してリスクなしに利益を得る)。同じ先物でも目的によって使われ方が全く異なる。
先物取引|買い建て・売り建てとヘッジ
買い建て(ロング)
価格上昇で利益
- 将来の価格上昇を見込んで今の価格で買う約束
- 将来の買付価格を固定したいときのヘッジにも使う
- 例:輸入業者が将来の外貨購入を先物でヘッジ
- 損益:満期時価格 − 先物価格(で利益・損失)
売り建て(ショート)
価格下落で利益
- 将来の価格下落を見込んで今の価格で売る約束
- 将来の売却価格を固定したいときのヘッジにも使う
- 例:輸出業者が将来の外貨受取を先物でヘッジ
- 損益:先物価格 − 満期時価格(で利益・損失)
オプション取引|コールとプット
オプションとは「将来一定の価格で売買できる権利」だ。買う権利がコール・オプション、売る権利がプット・オプションだ。買い手は権利行使するかどうかを選択できるが、売り手は買い手が権利行使すれば必ず応じなければならない。
コール・オプション買い(行使価格100円と仮定)
・原資産が100円超なら権利行使して利益
・原資産が100円以下なら権利行使しない(損失はプレミアム分のみ)
損失はプレミアムに限定、利益は無限大
・原資産が100円以下なら権利行使しない(損失はプレミアム分のみ)
損失はプレミアムに限定、利益は無限大
プット・オプション買い(行使価格100円と仮定)
・原資産が100円未満なら権利行使して利益(下落分を回収)
・原資産が100円超なら権利行使しない(損失はプレミアム分のみ)
保有資産の下落リスクヘッジに最適
・原資産が100円超なら権利行使しない(損失はプレミアム分のみ)
保有資産の下落リスクヘッジに最適
コール・オプション売り
・原資産が行使価格以下なら利益(プレミアムを受取)
・原資産が行使価格を超えると損失が拡大
プレミアム収入が上限、損失は無限大
・原資産が行使価格を超えると損失が拡大
プレミアム収入が上限、損失は無限大
プット・オプション売り
・原資産が行使価格以上なら利益(プレミアムを受取)
・原資産が行使価格を下回ると損失が拡大
プレミアム収入が上限、損失は大きくなりうる
・原資産が行使価格を下回ると損失が拡大
プレミアム収入が上限、損失は大きくなりうる
オプションの価値に影響する主な要因:①原資産価格、②行使価格との差(イン・ザ・マネー/アウト・オブ・ザ・マネー)、③残存期間(長いほど価値が高い)、④ボラティリティ(変動が大きいほどオプション価値は高い)、⑤金利。
スワップ取引|金利スワップと通貨スワップ
金利スワップ
固定金利と変動金利を交換
- 同一通貨・同一元本の固定金利と変動金利の利払いを交換
- 元本の交換はなし(キャッシュフローのみを交換)
- 変動金利ローンを持つ企業が固定金利の確実性を得たい場合に活用
- 金利上昇リスクのヘッジとして最も一般的
通貨スワップ
異なる通貨の元本・金利を交換
- 異なる通貨の元本と利息を交換する契約
- 元本の交換あり(開始時と満期時)
- 海外子会社の資金調達コスト削減・為替リスクヘッジに活用
- 金利スワップと異なり、為替変動リスクも同時にヘッジできる
ヘッジ会計
デリバティブを保有している場合、原則として時価評価して損益計算書に計上する。しかしヘッジ目的で利用する場合、損益の認識タイミングがズレて財務諸表の比較可能性を損なう問題がある。これを解消するのが「ヘッジ会計」だ。
| 処理方法 | 内容 | 適用場面 |
|---|---|---|
| 繰延ヘッジ | ヘッジ手段(デリバティブ)の損益を「繰延ヘッジ損益」として純資産に計上し、ヘッジ対象の損益認識と同期させる | 一般的なヘッジ会計の処理方法 |
| 時価ヘッジ | ヘッジ対象(資産・負債)を時価評価し、損益をP/Lに計上。ヘッジ手段も時価評価して損益を同期させる | その他有価証券を対象とするヘッジ等 |
ヘッジ会計の適用要件:①ヘッジの目的を明確にする(文書化)、②ヘッジの有効性が高い(80〜125%の範囲)、③定期的に有効性を評価する。これらを満たさない場合、ヘッジ会計は適用できない。
過去問で確認する
令和4年度 第17問(財務・会計)改題
オプション取引に関する記述として最も適切なものはどれか。
(ア)オプションの買い手は必ず権利を行使しなければならない。(イ)コール・オプションの買い手は原資産価格が上昇するほど損失が大きくなる。(ウ)プット・オプションの買い手は原資産価格が下落するほど利益が大きくなる。(エ)オプションの売り手は常にプレミアムを支払う。
解答:(ウ)
プット・オプション買い手は「売る権利」を持つため、原資産価格が下落するほど(行使価格との差が大きくなり)利益が増える。(ア)買い手は権利行使しないことも可能。(イ)コール買い手は価格上昇で利益。(エ)プレミアムは買い手が支払う。
令和2年度 第19問(財務・会計)改題
金利スワップに関する記述として最も適切なものはどれか。
(ア)金利スワップでは元本の交換が行われる。(イ)変動金利ローンを持つ企業が固定金利支払の立場にスワップすることで金利上昇リスクをヘッジできる。(ウ)金利スワップは取引所でのみ取引される。(エ)スワップの対象は金利のみで通貨の交換には使えない。
解答:(イ)
変動金利ローンを持つ企業は、金利上昇により利払い負担が増える。固定金利支払の立場にスワップすることで、将来の利払いを固定化してリスクをヘッジできる。(ア)金利スワップは元本交換なし。(ウ)相対取引が中心。(エ)通貨スワップも存在する。
平成29年度 第16問(財務・会計)改題
為替リスクをヘッジする目的で外貨建ての先物売りポジションを保有している企業が、円高方向に進んだ場合の損益はどうなるか。
先物売り(ショート)ポジションと円高の組み合わせが問われている。
解説
先物売りは「将来、現時点の価格で売る約束」をしている。円高(外貨安)が進むと将来の外貨現物の価値は下がるが、先物では高い価格で売る権利があるため先物ポジションで利益が生じる。この利益が現物の外貨建て資産の評価損と相殺されることでリスクがヘッジされる仕組み。
この記事のまとめ
- デリバティブは先物・オプション・スワップの3種が基本。目的はヘッジ・投機・裁定取引
- 先物:売買双方に義務。オプション:買い手に権利(義務なし)・売り手に義務
- コール買いは価格上昇で利益・損失はプレミアム限定。プット買いは価格下落で利益・下落ヘッジに最適
- 金利スワップは元本交換なし。通貨スワップは元本交換あり
- ヘッジ会計はデリバティブとヘッジ対象の損益認識タイミングを合わせる会計処理

