「労働基準法は知っているが労働契約法は…」という受験生は多い。実は1次試験の経営法務では労働契約法の有期契約ルール・無期転換制度・就業規則の変更手続き・解雇の4要件が繰り返し出題されている。この記事では労働基準法との違いを軸に整理する。
目次
労働基準法と労働契約法の違い
| 項目 | 労働基準法(労基法) | 労働契約法 |
|---|---|---|
| 性格 | 最低基準の強制法規。違反すれば刑事罰あり | 民事ルールの整備。違反しても刑事罰なし(契約の効力が問題になる) |
| 対象 | 労働時間・賃金・休日等の労働条件の最低基準 | 労働契約の成立・変更・終了のルール |
| 制定年 | 1947年(昭和22年) | 2007年(平成19年)制定、2012年改正で有期労働条件を追加 |
| 代表的なルール | 1日8時間・週40時間の法定労働時間、解雇予告30日前 | 無期転換ルール(5年)・雇止め法理・就業規則の不利益変更ルール |
試験でよく混同するポイント:「解雇予告は何日前か」は労基法(30日前または30日分の賃金)。「整理解雇の4要件」は労働契約法の解雇権濫用法理から導かれる判例法理。どちらの法律に基づく話かを区別して覚える。
有期労働契約と雇止め法理
有期労働契約のルール
期間の上限と更新制限
- 契約期間の上限:原則3年(専門的知識等を有する労働者は5年)
- 期間満了前の解雇にはやむを得ない事由が必要(期間中の途中解雇は難しい)
- 試用期間中でも有期契約なら途中解雇には相応の理由が必要
- 定期的に更新を重ねてきた場合は「期待権」が生じる可能性がある
雇止め法理(労働契約法19条)
実質的に正社員と同等なら雇止めは無効
以下のいずれかに該当する場合、更新しない雇止めは客観的合理的理由が必要:
- ①過去に反復して更新されており、雇止めが無期契約の解雇と社会通念上同視できる場合
- ②労働者が更新されると期待することに合理的な理由がある場合
無期転換ルール(5年ルール)
2013年4月施行の改正労働契約法で導入。有期契約を繰り返し更新して通算5年を超えた場合、労働者の申込みにより無期契約に転換される。
STEP 1
有期契約1年×5回更新
(通算5年超)
(通算5年超)
STEP 2
労働者が
無期転換を申込む
無期転換を申込む
STEP 3
使用者は
承諾義務が生じる
承諾義務が生じる
STEP 4
無期労働契約に
転換(成立)
転換(成立)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 通算期間のカウント | 同一の使用者との有期契約を通算して5年超。契約と契約の間に6か月以上の空白(クーリング期間)があれば通算がリセットされる |
| 転換後の労働条件 | 原則として転換前と同一の労働条件(別段の定めがある場合を除く)。賃金・勤務時間が自動的に正社員と同じになるわけではない |
| 申込み権の発生タイミング | 通算5年を超えた契約期間中に申込みができる。最初の申込み機会は「5年超となる契約が満了する前」 |
| 特例(一定の場合) | 高度専門職(年収1,075万円以上・5年プロジェクト)や定年後再雇用者は特例により通算5年のカウント方法が異なる |
就業規則の変更と解雇規制
就業規則の不利益変更(労働契約法10条)
原則:同意が必要
就業規則の変更で労働条件を不利益に変更するには、原則として労働者の同意が必要。ただし以下を満たす場合は同意なしでも有効:
- 変更内容が合理的であること
- 変更後の就業規則を周知させること
整理解雇の4要件(判例法理)
全て満たさないと解雇権の濫用
- ①人員削減の必要性:経営上やむを得ない理由(業績悪化・経営危機)があること
- ②解雇回避努力:役員報酬削減・残業中止・希望退職募集等の努力をしたこと
- ③人選の合理性:解雇対象者の選定基準が客観的・合理的であること
- ④手続きの相当性:労働者・労働組合と十分な説明・協議をしたこと
過去問で確認する
令和4年度 第35問(経営法務)改題
労働契約法の無期転換ルールに関する記述として最も適切なものはどれか。
(ア)有期労働契約の通算期間が3年を超えた場合に無期転換申込権が発生する。(イ)無期転換後の労働条件は自動的に正社員と同一になる。(ウ)使用者は労働者の無期転換申込みを拒否することができる。(エ)契約と契約の間に6か月以上の空白期間があると通算期間がリセットされる。
解答:(エ)
クーリング期間:有期契約の間に6か月以上の空白があると、前の通算期間はリセットされる。(ア)5年超が正しい(3年は誤り)。(イ)転換後も条件は原則転換前と同一。(ウ)5年超後の申込みに対して使用者は承諾義務を負い、拒否できない。
令和2年度 第34問(経営法務)改題
整理解雇の4要件に関する記述として最も適切なものはどれか。
(ア)整理解雇は4要件を満たせば、労働者の同意なしに有効に行うことができる。(イ)解雇回避努力として、まず正社員の雇用を守るために有期契約労働者を先に解雇することが原則的に求められる。(ウ)人選の合理性は使用者が任意に定めてよく、裁判所の審査は及ばない。(エ)4要件は必ずしもすべてを完全に満たす必要はなく、総合的に判断される。
解答:(エ)
整理解雇の4要件(要素)は判例上、4つを総合的に判断する「4要素説」が有力で、1つでも欠ければ無効という「4要件説」とは異なるニュアンスがある。(ア)4要件を満たしても解雇の有効性は裁判で争われる可能性がある。(イ)有期労働者を先に解雇することは必ずしも義務ではない。(ウ)人選の合理性は司法審査の対象。
令和元年度 第33問(経営法務)改題
就業規則の不利益変更に関する記述として最も適切なものはどれか。
(ア)就業規則の変更は、労働者の同意がなければ一切行うことができない。(イ)就業規則の変更を有効にするには、変更後の就業規則を労働者に周知させる必要がある。(ウ)就業規則を不利益に変更する場合、過半数組合か過半数代表者の同意があれば必ず有効となる。(エ)就業規則の作成・変更には労働基準監督署の承認が必要である。
解答:(イ)
就業規則の変更を有効にするための要件の1つが「変更後の就業規則の周知」(労働契約法10条)。(ア)一定の要件を満たせば同意なしでも変更可能。(ウ)組合等の同意は合理性判断の一要素だが、同意があれば必ず有効とはならない。(エ)届出は必要だが「承認」制ではない(届出義務)。
この記事のまとめ
- 労働契約法は民事ルール(刑事罰なし)。労基法は最低基準の強制法規(刑事罰あり)
- 有期契約の期間上限は原則3年。雇止め法理により実質的更新期待がある場合は保護される
- 無期転換ルール:同一使用者と通算5年超 → 労働者の申込みで無期転換。6か月クーリングでリセット
- 就業規則の不利益変更:原則同意が必要だが、合理性+周知で同意なしでも有効となりうる
- 整理解雇の4要件:①必要性 ②回避努力 ③人選の合理性 ④手続きの相当性(総合判断)

