民法基礎まとめ|契約・不法行為・時効の体系を図解で整理

経営法務の1次試験では、民法に関する問題がほぼ毎年出題される。とはいえ民法は条文数が千を超える体系で、どこから手をつければよいか迷いやすい。診断士試験で問われるのは「財産法」の一部に絞られるため、意思表示の瑕疵・不法行為・時効の3テーマを軸に整理するのが現実的だ。

目次

民法の体系と試験での位置づけ

民法は大きく「財産法」と「家族法」に分かれる。診断士試験で問われるのは主に財産法の範囲だ。物権と債権の違いを出発点として押さえておくと、各論の理解がしやすくなる。

財産法
物権・債権
  • 物権:物に対する排他的・絶対的な権利。所有権・担保物権など
  • 債権:特定の人に対して行為を請求する権利。契約から生じる
  • 物権は第三者にも主張できる(対世効)
  • 債権は当事者間のみに効力(相対効)

家族法
親族・相続
  • 親族法:婚姻・親子・後見など
  • 相続法:遺産分割・遺言・遺留分など
  • 事業承継と絡めて相続が出題されることがある
  • →「相続まとめ」記事も合わせて確認

意思表示の瑕疵|5類型と効果の違い

契約は「申込」と「承諾」の意思表示が合致して成立する。しかし意思表示に問題がある場合、その効果(有効・無効・取消)が変わる。診断士試験では特に「錯誤・詐欺・強迫」の効果と第三者への対抗が繰り返し問われる。

類型 内容 効果 善意の第三者
心裡留保 本人が真意でないと知りながら表示(冗談など) 原則有効
相手方が悪意・有過失なら無効
善意の第三者に対抗不可
虚偽表示 相手方と通謀して真意でない意思表示を行う 無効 善意の第三者に対抗不可(94条2項)
錯誤 表意者が意思表示の内容を誤解している 取消可(2017年改正) 善意無過失の第三者に対抗不可
詐欺 相手方の欺罔行為によって意思表示をした 取消可 善意無過失の第三者に対抗不可
強迫 相手方の強制によって意思表示をした 取消可 善意の第三者にも対抗可
最重要ポイント:強迫だけが第三者にも対抗できる。詐欺・錯誤は善意無過失の第三者を保護するが、強迫は被害者保護を優先して第三者にも取消を主張できる。この違いは毎年のように問われる。

無効と取消の違い

無効
はじめから効力なし
  • 主張できる人:誰でも(当事者・第三者)
  • 時間制限:なし(いつでも主張可能)
  • 例:公序良俗違反(90条)・強行法規違反
  • 例:虚偽表示による契約
  • 「最初から存在しなかった」ものとして扱う

取消
取り消すまでは有効
  • 主張できる人:取消権者のみ(制限行為能力者・被詐欺者・被強迫者など)
  • 追認できるときから5年、行為時から20年で消滅
  • 例:詐欺・強迫・錯誤による意思表示
  • 取り消された場合:はじめから無効だったとみなす

不法行為|成立要件と特殊不法行為

不法行為とは、故意または過失によって他人の権利・利益を侵害し、損害を与える行為だ(民法709条)。成立すると被害者は加害者に損害賠償を請求できる。試験では「使用者責任」と「時効期間」が頻出論点となる。

一般不法行為(709条)の成立要件
  • 故意または過失(加害者に帰責性があること)
  • 権利・利益の侵害(違法性があること)
  • 損害の発生(財産的・精神的損害)
  • 因果関係(②の侵害行為と③の損害の間に)
  • 責任能力(加害者に判断能力があること)
特殊不法行為 条文 内容 免責
使用者責任 715条 被用者が事業執行中に行った不法行為について使用者が連帯責任を負う 選任・監督に相当の注意を尽くした場合は免責可
土地工作物責任 717条 土地工作物の設置・保存の瑕疵で損害が生じた場合、占有者(一次)・所有者(二次)が責任 占有者は免責可。所有者は無過失責任
共同不法行為 719条 数人が共同して不法行為を行った場合 各自が全額の連帯責任(免責なし)
不法行為の消滅時効:損害および加害者を知った時から3年(人身損害は5年)、または不法行為の時から20年。「知らなかった場合でも20年」という絶対的な上限がある点が重要だ。

時効|取得時効と消滅時効

時効とは、一定期間継続した事実状態を法律上保護する制度だ。2017年(平成29年)の民法改正で消滅時効の規定が大きく変わった。改正前は「10年」が原則だったが、現在は「知った時から5年」が基本となっている。

取得時効(162条)
占有で権利を取得
  • 所有の意思をもって平穏・公然と占有を継続
  • 善意・無過失:10年で所有権取得
  • 悪意または有過失:20年で所有権取得
  • 不動産・動産ともに適用あり

消滅時効(166条・改正後)
権利行使しないと消滅
  • 債権:知った時から5年、または行使できる時から10年(いずれか早い方)
  • 不法行為:損害と加害者を知った時から3年(人身は5年)・不法行為から20年
  • 確定判決で確定した権利:10年

時効の障害 内容 効果
完成猶予 裁判上の請求・催告(内容証明郵便など) 一定期間、時効の完成を止める(催告は6ヶ月間猶予)
更新 確定判決・権利の承認(一部支払い等) 時効期間がリセットされ新たに進行する

過去問で確認する

令和5年度 第7問 改題

AはBに騙されてC所有の土地を購入した。その後BはDにその土地を転売した。AがBの詐欺を理由に売買契約を取り消す場合、善意無過失のDに対して取消を主張できるか。

詐欺による取消と第三者保護のルールが問われている。
解説

詐欺による取消は「善意無過失の第三者」には対抗できない(96条3項)。DがBの詐欺を知らず調査しても知り得なかった場合、AはDに取消を主張できない。強迫の場合と対比して覚えておく。

令和3年度 第8問 改題

AはBの強迫により建物の売買契約を締結した。その後Bは善意のCにその建物を転売した。AはCに対して取消を主張できるか。

強迫による取消と善意の第三者の関係が問われている。
解説

強迫による取消は、善意の第三者に対しても対抗できる。詐欺と異なり被害者(強迫を受けた者)を手厚く保護する設計になっている。「強迫 → 誰にでも対抗可」と覚える。

平成28年度 第11問 改題

使用者責任(民法715条)に関する記述として正しいものはどれか。(ア)使用者は常に免責される。(イ)使用者は選任・監督に相当の注意を尽くしても責任を負う。(ウ)使用者が選任・監督に相当の注意を尽くした場合は免責される。(エ)業務執行と無関係な行為でも使用者が責任を負う。

使用者責任の免責可否と適用範囲が問われている。
解答:(ウ)

使用者責任は「過失責任」の一形態。選任・監督に相当の注意を払えば免責される。土地工作物の「所有者」(無過失責任)と混同しないよう注意。また業務執行中の行為が対象で、純粋な私的行為には適用されない。

この記事のまとめ

  • 意思表示の瑕疵は5種類。強迫だけが善意の第三者にも対抗できるのが最頻出論点
  • 無効はいつでも誰でも主張可。取消は取消権者が期間内(追認できるときから5年・行為時から20年)に行使
  • 不法行為の成立要件は「故意過失・権利侵害・損害・因果関係・責任能力」の5つ
  • 使用者責任(715条)は免責可能。土地工作物の所有者は無過失責任
  • 消滅時効は2017年改正で「知った時から5年」が基本に(改正前は原則10年)
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この記事を書いた人

中小企業診断士試験勉強中のアラフィフシングルマザーです。
大学卒業後から現在まで、数々の失敗をしながらずっと自営業として試行錯誤を重ねてきました。
もっときちんと経営やビジネスの知識を身につけて、将来は他の事業者の方のお役にも立てたらいいな、と思うようになり、中小企業診断士の試験に挑戦中です。

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