過去問を初めて解いたとき、事例IVの経営分析の設問で「とりあえず財務比率を全部書けばいいかな」とやってしまいました。結果は大外れ。設問が求めているのは「問題点として指摘すべき比率を根拠を持って選ぶ」ことだったんです。事例IVは計算力より、「何を・なぜ選ぶか」の判断力の試験だと気づいてから、取り組み方が変わりました。
目次
事例IVは「財務の選択眼」を問う試験
事例IVは計算問題が中心ですが、単なる電卓叩き大会ではありません。「どの財務指標を選ぶべきか」「なぜその数値が問題なのか」という判断力と、計算結果を言葉で説明する記述力も問われます。公式を覚えるだけでなく、「なぜその公式が意味を持つのか」まで理解することが、得点を安定させる近道です。
設問の4タイプを把握する
第1問(ほぼ固定)
経営分析
財務諸表から問題点となる指標を選んで理由を述べる。収益性・効率性・安全性の3視点から2〜3つ指摘するのが定番。
💡 「良い点1つ+問題点2つ」を選ぶパターンも頻出
第2問頻出
CVP分析(損益分岐点)
固定費・変動費・売上高から損益分岐点を計算する。目標利益・安全余裕率も頻出。
💡 変動費率=変動費÷売上高。限界利益率=1-変動費率
第3問頻出
投資の経済性計算
NPV(正味現在価値)・回収期間法・IRRなどで投資の可否を判断する。割引率・税率・減価償却の扱いに注意。
💡 NPV=毎年のCF×現価係数の合計−初期投資額
第4問頻出
記述問題(意思決定・戦略)
計算結果を踏まえた意思決定の根拠を記述する。またはデリバティブ・リース等の財務知識を説明する。
💡 「計算根拠→結論→理由」の構成で書く
経営分析で使う財務指標の一覧
経営分析の設問では、以下の指標から「問題点」と「良い点」を選んで根拠を説明します。指標を計算できることと、「なぜこの指標が問題か」を言葉で説明できることの両方が必要です。
| 視点 |
指標名 |
計算式 |
問題点の方向性 |
| 収益性 |
売上高総利益率 |
売上総利益 ÷ 売上高 × 100 |
低い → 製造コストが高い・値引きが多い |
| 売上高営業利益率 |
営業利益 ÷ 売上高 × 100 |
低い → 販管費が重い・本業が苦しい |
| 売上高経常利益率 |
経常利益 ÷ 売上高 × 100 |
低い → 金融費用が重い・収益力が低い |
| 効率性 |
有形固定資産回転率 |
売上高 ÷ 有形固定資産 |
低い → 設備の稼働率が低い・過剰設備 |
| 売上債権回転率 |
売上高 ÷ 売上債権 |
低い → 回収が遅い・不良債権リスク |
| 棚卸資産回転率 |
売上高 ÷ 棚卸資産 |
低い → 在庫が過剰・陳腐化リスク |
| 安全性 |
流動比率 |
流動資産 ÷ 流動負債 × 100 |
低い(100%未満)→ 短期的な支払い能力に不安 |
| 自己資本比率 |
自己資本 ÷ 総資本 × 100 |
低い → 借入依存・財務体質が脆弱 |
| 固定長期適合率 |
固定資産 ÷(自己資本+固定負債)× 100 |
高い(100%超)→ 固定資産が長期資金で賄えていない |
経営分析の設問で迷うのが「どの指標を選ぶか」です。私がいつも意識しているのは「与件文と数値の両方で根拠が出せるか」という視点です。数値が悪くても与件文に言及がなければ弱い解答になりますし、逆に与件文に問題が書いてあっても数値が良ければ選ぶ根拠になりません。両方揃った指標を選ぶことが大切だと感じています。
CVP分析の基本公式を整理する
限界利益・限界利益率
限界利益 = 売上高 − 変動費
限界利益率 = 限界利益 ÷ 売上高
(= 1 − 変動費率)
「1円売るごとに固定費回収に貢献する割合」
損益分岐点売上高
損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率
「利益も損失もゼロになる売上高」
目標利益達成売上高
(固定費 + 目標利益)÷ 限界利益率
「目標利益を出すために必要な売上高」
安全余裕率
(実際売上高 − 損益分岐点売上高)÷ 実際売上高 × 100
「売上が何%下がっても赤字にならないか」
☕ カフェで覚えるCVP
コーヒー1杯500円のカフェで、1杯あたりの材料費(変動費)が200円、月の固定費(家賃・人件費等)が90万円だとします。
限界利益率 = (500−200) ÷ 500 = 60%
損益分岐点売上高 = 90万円 ÷ 0.6 = 150万円
→ 月に150万円(3,000杯分)売れて初めてトントン、というイメージです。
投資の経済性計算(NPV法)の手順
毎年のキャッシュフロー(CF)を計算する
CF = 税引後利益 + 減価償却費(非現金費用を戻す)
💡 税引後利益 = (売上増加額 − 費用増加額 − 減価償却費)×(1 − 税率)
現価係数を使って現在価値に割り引く
各年のCFに現価係数(問題文に与えられることが多い)を掛けて現在価値を算出する。
💡 現価係数がない場合:1年目 CF×1/(1+r)、2年目 CF×1/(1+r)² …と計算
NPV = 現在価値の合計 − 初期投資額
NPVがプラスなら投資採択、マイナスなら投資見送りが原則。
⚠️ 残存価値(スクラップ価格)や運転資本の回収も忘れずに。設問文をよく読む
結論を言語化する
「NPVは〇〇円(プラス/マイナス)であるため、投資を採択(見送り)することが妥当である」と記述する。
💡 計算結果だけ書いて終わりにしない。必ず結論の記述を添える
本番80分の時間配分
0〜5分
設問全体の先読み
設問タイプ・計算量・記述量を確認。難問は後回しにする判断をここでする。
5〜15分
与件文・財務諸表の確認
事業の概要と財務諸表(BS/PL)を読む。経営分析に使う数値をメモ。
15〜30分
第1問(経営分析)の記述
指標を選んで計算し、問題点の理由を簡潔に記述。15分かけて丁寧に。
30〜55分
第2・3問(計算問題)
CVP・NPVなど計算問題。計算ミスに注意。わからない設問はとばして先に進む。
55〜70分
第4問(記述・意思決定)
計算結果を踏まえた記述問題。「計算根拠→結論→理由」の構成で書く。
70〜80分
見直し・飛ばした問題への対応
計算ミス・単位の見落とし・記述の論理チェック。
⚠️ 事例IVで時間を失うパターン
①計算が合わないと何度もやり直して時間を使い切る → 一度で合わなければ次の設問へ、見直しで戻る。
②計算だけして記述を書き忘れる → 「採択する/しない」の結論文を必ず書く。
③単位ミス(万円と円の混同)→ 問題文の単位を最初に確認・メモする。
NPVをスーパーのタイムセールで考える
「正味現在価値」という言葉は難しく聞こえますが、考え方はシンプルです。「今もらえる1万円」と「1年後にもらえる1万円」は同じ価値ではない、という話です。
🛒 タイムセールで考えるNPV
スーパーのタイムセール。「今すぐ1,000円払うと、来年1,050円分の商品券がもらえる」というオファーがあったとします。
割引率(銀行金利等)が3%なら、来年の1,050円の現在価値は 1,050 ÷ 1.03 ≒ 1,019円。
今すぐ払う1,000円より大きいので → このオファーはお得(NPVがプラス)
これがNPV法の本質です。「将来もらえるお金を今の価値に換算して、今払うコストと比べる」だけです。
事例IVで一番焦ったのが「計算が合わない」という状況でした。設問に書かれた条件を見落として計算式が間違っていたり、単位を間違えていたり。今は問題文を読みながら「減価償却費は?」「税率は?」「残存価値はゼロか?」という確認チェックリストをメモする習慣をつけています。計算スピードより「設問の読み違えをしない」ことが、事例IVの安定した得点につながると感じています。
まとめ
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経営分析は「収益性・効率性・安全性」の3視点から指標を選ぶ。与件文と数値の両方で根拠が示せる指標を選ぶ
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CVP分析の核心は「限界利益率 = 1 − 変動費率」。損益分岐点 = 固定費 ÷ 限界利益率
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NPV計算は「税引後CF → 現在価値換算 → 初期投資を引く」の3ステップ
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計算問題でも必ず「採択する/しない」という結論の記述を忘れない
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計算が合わなければ次の設問へ。見直し時間を最後に必ず確保する
事例IVの「経営分析」設問では、最初のうち「計算が正しければ答えは一つのはず」と思っていました。でも模範解答と選んだ指標が違うことがよくあって。採点者が見ているのは「選んだ理由が論理的か」で、指標の選び方は複数の正解があることを知ってから、少し気楽に取り組めるようになりました。大切なのは「なぜこの指標を選んだか」を丁寧に説明することだと思っています。
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