BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)まとめ|定義・手順・ECRSの原則を図解で整理

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「BPRとカイゼン、どっちも業務をよくするんじゃないの?」と最初は思っていました。でも学習を進めるうち、出発点がまるで違うのだと気づきます。カイゼンは現状を前提にして少しずつ直す。BPRは「そもそもこのプロセスが必要か」と根本から問い直す。その差が試験でどう問われるか、整理してみました。

この記事でわかること

  • BPRの定義とハマー&チャンピーが示した4つのキーワード
  • BPI(カイゼン)との違いと使い分けの視点
  • BPR実施の5ステップフロー
  • ECRSの原則(業務改善の優先順序)
  • ERP・RPA・BPM・ワークフローとの関係
  • 過去問(H26・R2・R4年度類題)の解法ポイント
目次

BPRとは何か

BPR(Business Process Re-engineering:ビジネスプロセス・リエンジニアリング)は、1993年にマイケル・ハマーとジェームズ・チャンピーが著書『リエンジニアリング革命』で提唱した経営改革手法です。

「コスト・品質・サービス・スピードといった、現代の重大なパフォーマンス基準を劇的に改善するために、ビジネスプロセスを根本的に考え直し、抜本的に再設計すること
— ハマー&チャンピー(1993)

この定義には4つのキーワードが含まれており、試験でそのまま問われることがあります。

KEY 1
Fundamental
根本的
「なぜこの業務をするのか」という根本から問い直す。「どう改善するか」ではなく「そもそも必要か」から始める。
KEY 2
Radical
抜本的
表面的な修正ではなく、既存の構造を捨てて新しいプロセスを一から設計する。「ラジカル」という語が試験のキーワードになりやすい。
KEY 3
Dramatic
劇的
10〜20%の改善ではなく、桁違いの改善(10倍・1/10)を目標とする。漸進的改善とは目標水準が根本的に異なる。
KEY 4
Process
プロセス
機能別部門ではなく、顧客への価値提供の流れ(プロセス)を単位として考える。部門の壁を越えた横断的視点が本質。

BPIとの違い:抜本的改革 vs 継続的改善

BPI(Business Process Improvement:業務プロセス改善)は、現状プロセスを前提に少しずつ改善を積み重ねる手法です。日本的な「カイゼン」や TQM がこれにあたります。BPRとBPIは目指す方向は同じですが、出発点・規模・リスクが根本的に異なります。

観点 BPR BPI / カイゼン
改革の規模 抜本的・ラジカル(ゼロベース) 漸進的・継続的(現状の延長)
変化の速度 短期間で大きく変える 長期にわたり少しずつ積み重ねる
リスク 高い(失敗リスクあり) 低い(小さな変化の連続)
IT活用 ERPなど基幹系を一新することが多い 既存システムの部分的な改善
代表手法 BPR TQM・カイゼン・QCサークル
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試験で迷いやすいのが「ラジカル(Radical)」という語です。「根本的(Fundamental)」と混同しやすいのですが、Radicalは「抜本的・急進的」というニュアンスで、既存の仕組みを捨て去るほどの変革を指しています。この1語を正確に覚えておくと、BPRの選択肢問題で確実に得点できます。

BPRの実施手順

BPRは以下の5ステップで進めます。「現状分析よりも理想設計を優先する」点がカイゼンとの大きな違いです。

STEP
1
現状プロセスの可視化(As-Is分析)
現在の業務フローを図示し、どの工程にどれだけの時間・コスト・人手がかかっているかを計測する。目的は「現状を正当化する」ためではなく、「問題点を明確にする」ため。
STEP
2
問題点・ボトルネックの特定
顧客価値を生まない活動(非付加価値業務)、重複作業、承認の遅延など、プロセス上の障害箇所を洗い出す。
STEP
3
理想プロセスの設計(To-Be設計)
現状を前提とせず、「顧客視点で最適なプロセスとは何か」をゼロベースで描く。ここでITの活用可能性(ERP・RPA等)も同時に検討する。
STEP
4
IT・組織の再構築
新プロセスを支えるITシステムを整備し、組織構造・権限・評価制度を合わせて変える。人材・文化の変革を伴わない場合、BPRは失敗しやすい。
STEP
5
実施・効果測定
まずパイロット部門で試行し、KPIで効果を測定する。全社展開後もBPMやカイゼンで継続的に監視・改善する。
試験ポイント:BPRはIT導入後にプロセスを合わせるのではなく、プロセスを再設計してからそれを支えるITを選ぶのが正しい順序です。ハマーは「ITはBPRのイネーブラー(実現手段)であってドライバー(目的)ではない」と強調しています。

ECRSの原則

ECRSは業務改善の優先順序を示す原則です。BPR・IE(インダストリアルエンジニアリング)・カイゼン活動のいずれでも使われ、診断士試験の情報システム・運営管理の両科目で問われることがあります。

優先順 Eliminate(最優先) → Combine → Rearrange → Simplify(最後)
E
Eliminate
排除する
その業務・工程が本当に必要かを問い、不要であれば完全に取り除く。最も効果が大きく、最初に検討する。
具体例
承認印が形式的で内容確認が行われていなければ、その承認工程ごと廃止する。
C
Combine
結合する
分散している工程・部門・作業をまとめて一体化する。担当者の移動や引き継ぎロスを削減する。
具体例
受注入力と在庫確認を別々に行っていた工程を、1画面で同時完結できるシステムに統合する。
R
Rearrange
順序変更・代替
業務の順序を入れ替えたり、担当者・場所・時間を変更する。排除・結合ができない場合に検討する。
具体例
検査工程を後工程から前工程に移動し、不良品が下流に流れる前に発見できるようにする。
S
Simplify
簡素化する
残った業務をできる限り単純・標準化する。手順を減らし、誰がやっても同じ品質になるようにする。
具体例
複雑な手書き帳票をチェックボックス式のフォームに変えて、記入ミスと確認コストを下げる。
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ECRSは「まず排除、次に統合、それから順序変更、最後に簡素化」という優先順序が肝心です。いきなり「簡素化しよう」と動くのは、本来は不要な業務をきれいに効率化しているだけかもしれない——そう考えると、この順番に深い意味があるとわかります。

BPRを支えるIT活用

BPRにおいてITは「実現手段」です。プロセス再設計の後に選定・導入するものであり、ITありきでプロセスを合わせる(逆BPR)は失敗の原因になります。

システム BPRでの役割
ERP 購買・製造・販売・会計を一元管理。BPRによってプロセスを統合・標準化した後の基幹基盤として導入されることが多い。ERPのベストプラクティスに業務を合わせる形でBPRを行う場合もある。
ワークフローシステム 承認・回覧・手続きを電子化し、自動ルーティングで処理速度を高める。紙ベースの非効率プロセスをBPRで再設計した後の実装ツールとして機能する。
RPA ルーティンの手作業(データ転記・照合など)をソフトウェアロボットで自動化。プロセス内の反復作業を排除(Eliminate)するツールとして活用できる。
BPM(業務プロセス管理) 業務プロセスを継続的に監視・分析・改善するツール・手法。BPR実施後のモニタリングとカイゼンの組み合わせに使われる。PDCAを回すインフラ。

過去問で確認する

BPRは中小企業診断士1次試験「経営情報システム」で繰り返し出題されるテーマです。以下は出題傾向を踏まえた類題と解法ポイントです(著作権への配慮から概要・選択肢は再構成しています)。

H26年度 第22問 類題 経営情報システム
テーマ:BPRの定義
BPRに関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア.現状の業務プロセスを前提に、漸進的な改善を継続して行うことである。
イ.コスト・品質・スピードの劇的な改善を目的として、業務プロセスを根本から再設計することである。
ウ.BPRの推進においてITは主たる目的であり、まずITシステムを導入してからプロセスを適合させる。
エ.BPRは部門ごとに個別最適化する手法であり、部門を横断する視点は不要である。
正解:イ ハマー&チャンピーの定義そのまま。ア:漸進的改善はカイゼン。ウ:ITはイネーブラー(実現手段)であってドライバー(目的)ではない。エ:BPRはプロセス横断的視点が本質。
R1年度 第20問 類題 経営情報システム
テーマ:4キーワード
ハマー&チャンピーが定義したBPRの4つのキーワードとして、最も適切なものはどれか。
ア.漸進的・部分的・小幅な・機能
イ.根本的・抜本的・劇的・プロセス
ウ.継続的・段階的・反復的・部門
エ.戦略的・長期的・計画的・組織
正解:イ 「根本的(Fundamental)・抜本的(Radical)・劇的(Dramatic)・プロセス(Process)」の4語は必須暗記。特に「Radical=抜本的」と「Fundamental=根本的」の区別が問われる。
R4年度 第21問 類題 経営情報システム
テーマ:ECRSの原則
業務改善の優先順序として知られるECRSの4原則を、優先度の高い順に並べたものとして、最も適切なものはどれか。
ア.Simplify → Rearrange → Combine → Eliminate
イ.Combine → Eliminate → Simplify → Rearrange
ウ.Eliminate → Combine → Rearrange → Simplify
エ.Rearrange → Simplify → Eliminate → Combine
正解:ウ ECRSは「排除→結合→順序変更→簡素化」の順が原則。まず業務そのものの必要性を問い(Eliminate)、統合できるものをまとめ(Combine)、順序を最適化し(Rearrange)、最後に残った作業を簡単にする(Simplify)。

まとめ

BPRの核心は「ラジカル(抜本的)」という語に集約されます。漸進的に直すカイゼンとは出発点が違い、プロセスをゼロベースで問い直すことで劇的な改善を目指す——この対比が試験で繰り返し問われます。

試験直前チェックリスト
・BPRの4キーワード:根本的・抜本的(Radical)・劇的・プロセス
・BPR vs カイゼン:抜本的改革 vs 漸進的改善
・ECRSの優先順:E(排除)→ C(結合)→ R(順序変更)→ S(簡素化)
・ITはBPRのイネーブラー(実現手段)であってドライバー(目的)ではない
・BPR失敗の主因:人的側面(文化・インセンティブ)の軽視
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この記事を書いた人

中小企業診断士試験勉強中のアラフィフシングルマザーです。
大学卒業後から現在まで、数々の失敗をしながらずっと自営業として試行錯誤を重ねてきました。
もっときちんと経営やビジネスの知識を身につけて、将来は他の事業者の方のお役にも立てたらいいな、と思うようになり、中小企業診断士の試験に挑戦中です。

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