需要予測手法 | 中小企業診断士1次試験 運営管理

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過去問を解いていて「指数平滑法のαって何をコントロールしているの?」と手が止まりました。計算式は追えるのに、その背景にある「なぜそうなるのか」がわかってから、一気に整理できた気がします。

「来月、何個売れるのか」——この問いに答えようとするのが需要予測です。在庫を持ちすぎれば資金が眠り、少なすぎれば機会損失が生まれます。中小企業診断士試験の運営管理では、この需要予測の手法が計算問題として出題されます。定性的手法の全体像から、試験頻出の指数平滑法の計算まで、ひとつずつ整理してみます。

目次

需要予測の目的と3つの使われ方

3
つの計画へ連動
在庫管理・生産計画・調達計画
2
大カテゴリ
定性的手法と定量的手法
α
平滑定数
指数平滑法の核心パラメータ

需要予測とは「将来の需要量を見積もること」ですが、それ自体が目的ではありません。予測した数字を使って、次の3つの計画に活かすことが本来の目的です。

在庫管理
過剰在庫と欠品のどちらも避けるために、「次の期間にどれだけ必要か」を予測します。予測精度が上がるほど、在庫コストを削減できます。
生産計画
いつ、どの製品を、何個作るかを決めるためのインプットになります。需要予測なしに生産計画を立てると、過剰生産や生産不足に直結します。
調達計画
原材料や部品を、いつ、どれだけ発注するかを決めます。リードタイム(調達期間)を考慮した上で、需要予測値をもとに発注量を算出します。

定性的手法——数字が少ないときに使う予測の知恵

「新製品を出したばかりで過去データがない」「業界全体が大きく変わりそう」——そんな状況では、過去データをそのまま使う定量的手法は力を発揮できません。そこで登場するのが定性的手法です。

QUALITATIVE 01
デルファイ法
複数の専門家に対してアンケートを繰り返し、意見を収束させていく手法です。最初は意見が分散していても、何回かのラウンドを経て収束していきます。顔を合わせないため「みんながそう言うから」という同調圧力が起きにくい設計になっています。
QUALITATIVE 02
市場調査(消費者意向調査)
実際の消費者にアンケートやインタビューを行い、購買意向を集める手法です。新製品の需要予測によく使われます。ただし「買いたい」と答えた人が実際に買うとは限らない点に注意が必要です。
経営者・販売員の判断
現場の販売員の肌感覚や、経営者の業界知識に基づく予測です。スピードは速いものの、個人の主観や楽観バイアスが入りやすいのが弱点です。

定量的手法——過去データから未来を読む

過去の実績データがある程度蓄積されているなら、定量的手法が活躍します。試験では特に「移動平均法」と「指数平滑法」の計算が問われます。

移動平均法
直近N期間の平均値を予測値にする
シンプルで理解しやすい
N期間が大きいほど安定・遅行
過去データを同等に扱う
指数平滑法
直近の実績に重みをおく
αで反応速度を調整できる
αが大きいほど変動に敏感
過去全データを間接的に参照

移動平均法の仕組みと計算

「直近3ヶ月の平均を、来月の予測値にする」——これが単純移動平均法の核心です。まるで電車の窓から景色を見るように、N期間という「窓」を一期間ずつずらしながら平均を更新していきます。

01
移動期間Nを決める
直近何期間を使うかを決めます。N=3なら3ヶ月、N=5なら5ヶ月分のデータを使います。Nが大きいほど安定しますが、最新の動きへの反応が遅くなります。
02
直近N期間の実績を合計する
例:N=3で、直近3ヶ月の実績が100・120・110個なら、合計は330個。
03
Nで割って予測値を算出
330 ÷ 3 = 110個が次の期間の予測値になります。
04
新しい実績が入ったら窓をずらす
次の期に実績が確定したら、最も古い期のデータを外し、新しい実績を追加してもう一度平均を計算します。
単純移動平均 vs 加重移動平均

単純移動平均はN期間のデータを等しく扱いますが、加重移動平均では直近の期ほど重い重みを設定します。

例(N=3、重み:直近=3、2期前=2、3期前=1):実績100・120・110に対し、予測値 = (110×3 + 120×2 + 100×1) ÷ (3+2+1) = (330+240+100) ÷ 6 = 111.7個

実績単純移動平均(N=3)予測予測誤差
1月100
2月120
3月110
4月130(100+120+110)÷3 = 110+20
5月115(120+110+130)÷3 = 120−5
6月(110+130+115)÷3 = 118.3

指数平滑法——αが「記憶の鮮度」を決める

指数平滑法は、直近の実績を重く、古い実績を軽く扱う予測手法です。「平滑定数α(アルファ)」というひとつのパラメータで、その重み付けの度合いをコントロールします。

予測式:
Ft = α × At-1 + (1-α) × Ft-1

Ft  = t期の予測値
At-1 = t-1期の実績値
Ft-1 = t-1期の予測値
α  = 平滑定数(0 < α < 1)

この式の意味は「次の予測値 = 直近の実績 × αの重み + 前回の予測値 × (1-α)の重み」です。αが大きいほど実績(現実)を重視し、αが小さいほど過去の予測(慣性)を重視することになります。

α が大きい(α → 1 に近い)
直近の実績を強く反映
需要変動に素早く反応
ランダムな変動にも過剰反応しやすい
トレンド変化が大きい商品に向く
α が小さい(α → 0 に近い)
過去の予測(慣性)を重視
変動に対してゆっくり反応
安定した需要の商品に向く
ノイズを平滑化する効果が高い
計算例(α=0.4)

初期予測値 F1=100、1月実績 A1=120 のとき:

F2 = 0.4 × 120 + 0.6 × 100 = 48 + 60 = 108

2月実績 A2=110 のとき:

F3 = 0.4 × 110 + 0.6 × 108 = 44 + 64.8 = 108.8

実績 At予測値 Ft(α=0.4)計算過程
1月120100(初期設定)
2月1101080.4×120 + 0.6×100
3月130108.80.4×110 + 0.6×108
4月115.30.4×130 + 0.6×108.8
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αの値を変えると予測値がどう変わるか、実際に手計算してみると「α=0.9にしたら急に変動に食いついてきた!」という感覚がつかめました。試験では計算と同時に「αの大小がどういう意味を持つか」も問われるので、両方押さえておくと安心です。

回帰分析——要因と需要の関係を数式で表す

移動平均法や指数平滑法は「時間の流れ」だけを使って予測します。一方、回帰分析は「何かの要因(例:気温・広告費・所得水準)と需要の関係」を数式に表して予測する手法です。

要因変数(独立変数)

気温、広告費、前月の販売数、所得水準…
回帰式で関係を定式化
目的変数(従属変数)

需要量(予測値)
単回帰式: y = a + bx
y = 需要量(予測したい値)
x = 説明変数(気温、広告費 など)
a = 切片(xが0のときのy)
b = 回帰係数(xが1増えるとyがどれだけ変わるか)

試験では回帰分析の計算自体は高度すぎて出題されにくいですが、「独立変数・従属変数・回帰係数」といった用語と、「回帰分析はなぜ定量的手法に分類されるか」については押さえておく必要があります。

予測誤差の評価指標——どれだけ「外れたか」を測る

予測は必ずズレます。問題は「どのくらいズレているか」を測る指標を選ぶことです。試験では3つの指標が登場します。

指標正式名称計算方法特徴・注意点
MAD平均絶対偏差
Mean Absolute Deviation
|実績−予測| の平均誤差の大小を直感的に把握できる。プラスとマイナスが打ち消されない
MSE平均二乗誤差
Mean Squared Error
(実績−予測)² の平均大きな誤差を強調(二乗するため)。外れ値に敏感
MAPE平均絶対パーセント誤差
Mean Absolute Percentage Error
|実績−予測|/実績 の平均×100%相対的な誤差率で表す。異なる商品間の比較に向く
計算例(4月〜6月の誤差)
実績予測誤差|誤差|誤差²|誤差|/実績
4月130110+202040015.4%
5月115120−55254.3%
6月125118+77495.6%
平均MAD=10.7MSE=158MAPE=8.4%

日常の場面で考えてみると——コンビニのおでんと需要予測

10月になると、コンビニではおでんが並びはじめます。「今日は何個仕込めばよいか」——これは正に需要予測の問題です。

移動平均法で考えると
「直近3日間の平均」をその日の仕込み数にします。昨日50個・一昨日45個・3日前55個なら、今日の仕込みは(50+45+55)÷3=50個。でもこれは昨日の急な冷え込みで販売が急増した場合、反映が遅れます。
指数平滑法で考えると
αを大きく設定して「昨日急に売れた事実」を強く反映させます。天気予報を見て「今日も寒そうだ」なら、α=0.7程度の高めの設定で昨日の急増を素直に受け取ります。
回帰分析で考えると
「最低気温が1℃下がるとおでんが◯個多く売れる」という関係式を作ります。天気予報で気温がわかれば、より精度の高い予測ができます。

コンビニのオーナーがデータを見ながら「今日は多めに仕込もう」と判断する行為——その裏にある考え方が、需要予測の各手法に対応しています。試験問題で手法名が出たとき、このおでんの場面を思い浮かべると記憶に残りやすくなります。

試験対策のポイント——計算と概念の両方を押さえる

POINT 01
指数平滑法の計算は確実に
Ft = αAt-1 + (1-α)Ft-1 の式を使い、順番に計算できるようにしておきます。計算ミスを防ぐために、表形式で縦に書いていくのがおすすめです。
POINT 02
αの大小と特性の関係
「αが大きい→直近実績重視→変動に敏感」「αが小さい→過去予測重視→変動に鈍感」この対応関係は選択肢問題でよく出ます。
POINT 03
定性的・定量的の使い分け
「新製品→データなし→定性的」「既存製品・安定需要→データあり→定量的」の基本分けを覚えつつ、デルファイ法の特徴(アンケート・専門家・収束)も押さえます。
POINT 04
予測誤差指標の名称と式
MAD・MSE・MAPEの3つの違い(絶対値・二乗・パーセント)を混同しないように整理しておきます。「外れ値に敏感なのはMSE」という特徴が問われることがあります。
よく間違える落とし穴
αが大きいほど「安定する」と思いがちですが逆です。αが大きいほど変動に敏感になります。「αが小さい = 鈍感 = 安定」という対応を改めて確認しておいてください。

よくある質問

Q. 移動平均法と指数平滑法、どちらが試験で多く出るのですか?
指数平滑法の計算問題が比較的多く出題される傾向があります。ただし移動平均法も計算の出題があるため、両方の手順を押さえておくと安心です。特に「α=0.3のとき…」という設定で予測値を求める計算は繰り返し練習しておくことをおすすめします。
Q. 指数平滑法で初期の予測値 F1 はどう決めるのですか?
試験問題では「F1 = A1(最初の実績値)」や「F1 = 所与の値」として与えられることがほとんどです。実務では最初のN期間の平均を使う方法もありますが、試験では問題文の指示に従って計算します。
Q. デルファイ法はどんな状況で使いますか?
新技術や新市場など、過去データが少ない分野で専門家の意見を集約したい場合に使います。医療技術の需要予測や新エネルギー市場の見通しなどが実際の適用例です。複数回のアンケートで意見を収束させる点が特徴です。
Q. MAPEはいつ使うのが向いていますか?
販売量の規模が大きく違う複数の商品の予測精度を比較するときに便利です。例えば「月1万個売れるA商品の誤差100個」と「月100個売れるB商品の誤差10個」では、MAPEを使うと「A=1%、B=10%」と相対的な精度の差が見えます。
Q. 加重移動平均法と指数平滑法の違いは何ですか?
どちらも直近データに重みをおく点は同じですが、加重移動平均は「どのN期間に、どんな重みをつけるか」を明示的に決めます。指数平滑法はαひとつで過去全データの重みが自動的に決まり(指数的に減衰する)、パラメータが少なく管理しやすいのが利点です。
U のメモ

指数平滑法の計算で最初に戸惑ったのは「Ft-1って何期のこと?」という添字の読み方でした。tが「今の期」、t-1が「ひとつ前の期」と意識してから、表を縦に追いかけていく感覚でスムーズに計算できるようになりました。

αの選び方は試験では与えられますが、「なぜそのαを選ぶのか」という直感(需要が安定しているか、変動しやすいか)を持っておくと、選択肢問題の根拠として使えます。

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この記事を書いた人

中小企業診断士試験勉強中のアラフィフシングルマザーです。
大学卒業後から現在まで、数々の失敗をしながらずっと自営業として試行錯誤を重ねてきました。
もっときちんと経営やビジネスの知識を身につけて、将来は他の事業者の方のお役にも立てたらいいな、と思うようになり、中小企業診断士の試験に挑戦中です。

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