U過去問を解いていて「指数平滑法のαって何をコントロールしているの?」と手が止まりました。計算式は追えるのに、その背景にある「なぜそうなるのか」がわかってから、一気に整理できた気がします。
「来月、何個売れるのか」——この問いに答えようとするのが需要予測です。在庫を持ちすぎれば資金が眠り、少なすぎれば機会損失が生まれます。中小企業診断士試験の運営管理では、この需要予測の手法が計算問題として出題されます。定性的手法の全体像から、試験頻出の指数平滑法の計算まで、ひとつずつ整理してみます。
需要予測の目的と3つの使われ方
需要予測とは「将来の需要量を見積もること」ですが、それ自体が目的ではありません。予測した数字を使って、次の3つの計画に活かすことが本来の目的です。
定性的手法——数字が少ないときに使う予測の知恵
「新製品を出したばかりで過去データがない」「業界全体が大きく変わりそう」——そんな状況では、過去データをそのまま使う定量的手法は力を発揮できません。そこで登場するのが定性的手法です。
定量的手法——過去データから未来を読む
過去の実績データがある程度蓄積されているなら、定量的手法が活躍します。試験では特に「移動平均法」と「指数平滑法」の計算が問われます。
移動平均法の仕組みと計算
「直近3ヶ月の平均を、来月の予測値にする」——これが単純移動平均法の核心です。まるで電車の窓から景色を見るように、N期間という「窓」を一期間ずつずらしながら平均を更新していきます。
単純移動平均はN期間のデータを等しく扱いますが、加重移動平均では直近の期ほど重い重みを設定します。
例(N=3、重み:直近=3、2期前=2、3期前=1):実績100・120・110に対し、予測値 = (110×3 + 120×2 + 100×1) ÷ (3+2+1) = (330+240+100) ÷ 6 = 111.7個
| 月 | 実績 | 単純移動平均(N=3)予測 | 予測誤差 |
|---|---|---|---|
| 1月 | 100 | — | — |
| 2月 | 120 | — | — |
| 3月 | 110 | — | — |
| 4月 | 130 | (100+120+110)÷3 = 110 | +20 |
| 5月 | 115 | (120+110+130)÷3 = 120 | −5 |
| 6月 | — | (110+130+115)÷3 = 118.3 | — |
指数平滑法——αが「記憶の鮮度」を決める
指数平滑法は、直近の実績を重く、古い実績を軽く扱う予測手法です。「平滑定数α(アルファ)」というひとつのパラメータで、その重み付けの度合いをコントロールします。
Ft = α × At-1 + (1-α) × Ft-1
Ft = t期の予測値
At-1 = t-1期の実績値
Ft-1 = t-1期の予測値
α = 平滑定数(0 < α < 1)
この式の意味は「次の予測値 = 直近の実績 × αの重み + 前回の予測値 × (1-α)の重み」です。αが大きいほど実績(現実)を重視し、αが小さいほど過去の予測(慣性)を重視することになります。
初期予測値 F1=100、1月実績 A1=120 のとき:
F2 = 0.4 × 120 + 0.6 × 100 = 48 + 60 = 108
2月実績 A2=110 のとき:
F3 = 0.4 × 110 + 0.6 × 108 = 44 + 64.8 = 108.8
| 期 | 実績 At | 予測値 Ft(α=0.4) | 計算過程 |
|---|---|---|---|
| 1月 | 120 | 100(初期設定) | — |
| 2月 | 110 | 108 | 0.4×120 + 0.6×100 |
| 3月 | 130 | 108.8 | 0.4×110 + 0.6×108 |
| 4月 | — | 115.3 | 0.4×130 + 0.6×108.8 |



αの値を変えると予測値がどう変わるか、実際に手計算してみると「α=0.9にしたら急に変動に食いついてきた!」という感覚がつかめました。試験では計算と同時に「αの大小がどういう意味を持つか」も問われるので、両方押さえておくと安心です。
回帰分析——要因と需要の関係を数式で表す
移動平均法や指数平滑法は「時間の流れ」だけを使って予測します。一方、回帰分析は「何かの要因(例:気温・広告費・所得水準)と需要の関係」を数式に表して予測する手法です。
気温、広告費、前月の販売数、所得水準…
需要量(予測値)
y = 需要量(予測したい値)
x = 説明変数(気温、広告費 など)
a = 切片(xが0のときのy)
b = 回帰係数(xが1増えるとyがどれだけ変わるか)
試験では回帰分析の計算自体は高度すぎて出題されにくいですが、「独立変数・従属変数・回帰係数」といった用語と、「回帰分析はなぜ定量的手法に分類されるか」については押さえておく必要があります。
予測誤差の評価指標——どれだけ「外れたか」を測る
予測は必ずズレます。問題は「どのくらいズレているか」を測る指標を選ぶことです。試験では3つの指標が登場します。
| 指標 | 正式名称 | 計算方法 | 特徴・注意点 |
|---|---|---|---|
| MAD | 平均絶対偏差 Mean Absolute Deviation | |実績−予測| の平均 | 誤差の大小を直感的に把握できる。プラスとマイナスが打ち消されない |
| MSE | 平均二乗誤差 Mean Squared Error | (実績−予測)² の平均 | 大きな誤差を強調(二乗するため)。外れ値に敏感 |
| MAPE | 平均絶対パーセント誤差 Mean Absolute Percentage Error | |実績−予測|/実績 の平均×100% | 相対的な誤差率で表す。異なる商品間の比較に向く |
| 月 | 実績 | 予測 | 誤差 | |誤差| | 誤差² | |誤差|/実績 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 4月 | 130 | 110 | +20 | 20 | 400 | 15.4% |
| 5月 | 115 | 120 | −5 | 5 | 25 | 4.3% |
| 6月 | 125 | 118 | +7 | 7 | 49 | 5.6% |
| 平均 | — | MAD=10.7 | MSE=158 | MAPE=8.4% | ||
日常の場面で考えてみると——コンビニのおでんと需要予測
10月になると、コンビニではおでんが並びはじめます。「今日は何個仕込めばよいか」——これは正に需要予測の問題です。
コンビニのオーナーがデータを見ながら「今日は多めに仕込もう」と判断する行為——その裏にある考え方が、需要予測の各手法に対応しています。試験問題で手法名が出たとき、このおでんの場面を思い浮かべると記憶に残りやすくなります。
試験対策のポイント——計算と概念の両方を押さえる
よくある質問
指数平滑法の計算で最初に戸惑ったのは「Ft-1って何期のこと?」という添字の読み方でした。tが「今の期」、t-1が「ひとつ前の期」と意識してから、表を縦に追いかけていく感覚でスムーズに計算できるようになりました。
αの選び方は試験では与えられますが、「なぜそのαを選ぶのか」という直感(需要が安定しているか、変動しやすいか)を持っておくと、選択肢問題の根拠として使えます。









