U円安になると輸出企業が儲かると聞きますが、「そもそも為替レートはなぜ変動するのか」という問いに答えられていませんでした。購買力平価を勉強したとき、「物価の差が為替を動かす」という考え方の骨格がつかめた気がします。長期と短期で為替の動き方が違うというのも、直感的には面白い発見でした。
為替レート決定理論は、なぜ通貨の交換比率が変動するかを説明する理論の総称です。長期的には購買力平価(PPP)、短期的には金利平価(IRP)が為替変動の主要因とされます。中小企業診断士試験では、購買力平価・金利平価の定義・円高/円安と輸出入への影響・マンデル=フレミングモデルとの関係が問われます。
目次
購買力平価(PPP:Purchasing Power Parity)
「同じ財は世界中でひとつの価格で取引されるべき」(一物一価の法則)を国際的に適用したものが購買力平価です。長期的には、2国間の為替レートは物価水準の差によって決まるという考え方です。
ABSOLUTE PPP
絶対的購買力平価
定義為替レート=自国物価水準÷外国物価水準
考え方日本で100円、米国で1ドルの財があれば、1ドル=100円が均衡レート
限界貿易できない財(サービス・不動産等)が多く、現実との乖離が大きい
RELATIVE PPP
相対的購買力平価
定義為替レートの変化率=自国インフレ率-外国インフレ率
考え方日本の物価が米国より2%高く上昇すれば、円は2%減価(円安)する
有用性長期的な為替トレンドの説明に有効。絶対的PPPより現実的
試験頻出:「日本の物価上昇率が外国より高い→円安方向に動く」という論理は必須。インフレ率↑→その国の通貨は減価、という向きを押さえましょう。
金利平価(IRP:Interest Rate Parity)
短期の為替変動を説明する理論です。「資本は収益率の高い通貨に流れ、最終的に両国の投資収益率は等しくなる」という考え方です。
UNCOVERED IRP
カバーなし金利平価
内容自国金利-外国金利≒予想される為替変化率
例日本の金利が米国より2%低い→円は2%増価(円高)が予想される
前提為替リスクを考慮しない(カバーなし)
COVERED IRP
カバーあり金利平価
内容先物レートを使って為替リスクをヘッジした場合でも収益率が均等化
例先物為替予約で為替リスクを除いた裁定取引でも超過収益は得られない
前提先物市場が存在する
金利平価の直感的な理解:
- 米国の金利が日本より高い→投資家がドル資産を買う→円売り・ドル買い→円安進行
- しかし円安が進めば、いずれ「今の円安水準からは円高に戻るはず」という期待が生まれる
- その円高期待分が金利差を相殺するため、裁定機会はなくなる



「高金利通貨は増価する(強くなる)」のか「減価する(弱くなる)」のか、最初に混乱しました。金利平価では、高金利国の通貨は将来的に減価が予想される(だから今高金利でないと投資されない)という論理です。短期的には高金利で資本が集まり上昇することもありますが、理論上の均衡では将来の減価が折り込まれています。
円高・円安の影響
| 項目 | 円高(例:1ドル100円→80円) | 円安(例:1ドル100円→130円) |
|---|---|---|
| 輸出企業 | ドル収入の円換算が減少→収益悪化 | ドル収入の円換算が増加→収益改善 |
| 輸入企業 | 輸入コストの円換算が減少→収益改善 | 輸入コストの円換算が増加→収益悪化 |
| 物価 | 輸入物価下落→デフレ圧力 | 輸入物価上昇→インフレ圧力 |
| 海外旅行 | 外国が安く感じる(有利) | 外国が高く感じる(不利) |
| 外国人観光客 | 日本が高く感じる(訪日減少) | 日本が安く感じる(訪日増加) |
| 対外投資の評価 | 外貨建て資産の円換算減少 | 外貨建て資産の円換算増加 |
為替レート決定理論の整理
| 理論 | 決定要因 | 適用時間軸 | 主な前提 |
|---|---|---|---|
| 購買力平価(PPP) | 2国間の物価水準差 | 長期 | 一物一価・完全競争 |
| 金利平価(IRP) | 2国間の金利差 | 短〜中期 | 資本移動が自由 |
| 国際収支説 | 経常収支(貿易・サービス) | 中期 | 輸出入の需給バランス |
| アセットアプローチ | 資産需給・期待形成 | 短期 | 将来予測・資産選好 |
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H28 第15問経済学・経済政策
購買力平価説に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア.日本の物価上昇率が米国より高い場合、長期的に円は増価(円高)する方向に動く。
イ.購買力平価によれば、一物一価の法則が成立するよう為替レートが決まる。
ウ.購買力平価は短期の為替変動を説明するのに最も適した理論である。
エ.金利が高い国の通貨は、購買力平価によって増価すると予測される。
ア.日本の物価上昇率が米国より高い場合、長期的に円は増価(円高)する方向に動く。
イ.購買力平価によれば、一物一価の法則が成立するよう為替レートが決まる。
ウ.購買力平価は短期の為替変動を説明するのに最も適した理論である。
エ.金利が高い国の通貨は、購買力平価によって増価すると予測される。
正解:イ ア:物価上昇率が高い国の通貨は減価(円安方向)。ウ:PPPは長期の為替決定理論(短期はIRP等)。エ:金利は金利平価の決定要因(PPPではない)。
R1 第14問経済学・経済政策
金利平価説に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア.自国の金利が外国より高い場合、自国通貨は将来的に増価が予想される。
イ.自国の金利が外国より低い場合、自国通貨は将来的に増価が予想される。
ウ.金利差があれば、裁定取引によって超過収益が無限に得られる。
エ.金利平価説は長期の為替決定理論として最も適用される。
ア.自国の金利が外国より高い場合、自国通貨は将来的に増価が予想される。
イ.自国の金利が外国より低い場合、自国通貨は将来的に増価が予想される。
ウ.金利差があれば、裁定取引によって超過収益が無限に得られる。
エ.金利平価説は長期の為替決定理論として最も適用される。
正解:イ 金利平価では、低金利国の通貨は将来増価が予想される(さもなければ低金利資産が選ばれない)。ア:高金利→将来減価が予想される(逆)。ウ:裁定取引によって超過収益はなくなる。エ:金利平価は短〜中期(長期はPPP)。









