会社法の機関設計まとめ | 中小企業診断士1次試験 経営法務

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「取締役会設置会社と非設置会社で何が違うの?」「監査役と監査等委員会は別物?」——会社法の機関設計は用語が多くて混乱しますよね。公開会社・非公開会社の違いを軸に、機関設計の全体像をすっきり整理します。

目次

会社法の機関設計とは——そもそも「機関」とは何か

「機関」の定義と機関設計の意義

会社法における「機関(きかん)」とは、会社の意思決定・業務執行・監査等を担う人またはその集合体のことです。株式会社は機関の組み合わせ(機関設計)によって、経営の効率性と透明性のバランスを取ります。会社法は一定の会社類型に必須機関を定めつつ、それ以外は会社の選択に委ねています。

機関の種類(主要なもの)
  • 株主総会:会社の最高意思決定機関
  • 取締役:業務執行の決定・執行
  • 取締役会:取締役の合議体
  • 代表取締役:会社を代表して業務執行
  • 監査役:取締役の業務監査・会計監査
  • 監査役会:監査役の合議体
  • 会計参与:取締役と共同して計算書類作成
  • 会計監査人:計算書類等の監査(公認会計士・監査法人)
  • 監査等委員会:取締役で構成される監査機関
  • 指名委員会・報酬委員会・監査委員会(3委員会設置会社)
機関設計の2軸

機関設計の選択肢は「公開会社か非公開会社か」と「大会社か中小会社か」の2軸によって制約されます。
公開会社:全部または一部の株式に譲渡制限のない会社→取締役会設置義務あり
非公開会社(株式譲渡制限会社):全部の株式に譲渡制限がある会社→機関設計の自由度が高い
大会社:資本金5億円以上または負債200億円以上→監査役会または監査等委員会・指名委員会等設置が必要(公開大会社)

⚠️ 「公開会社」は上場会社とは別の概念
会社法上の「公開会社」は証券取引所に上場している会社ではなく、株式の一部に譲渡制限のない会社のことです。上場会社は公開会社に含まれますが、非上場でも公開会社に該当する場合があります。この用語の違いは試験頻出です。

機関設計を理解する最初のステップは「公開会社か非公開会社か」を判断することです。この区別によって設置が義務づけられる機関が大きく変わります。

公開会社・非公開会社・大会社の定義

区分 定義 代表的な例
公開会社 発行する株式の全部または一部に譲渡制限のない会社(会社法第2条5号) 上場会社・大手非上場会社(一部株式に制限なし)
非公開会社(株式譲渡制限会社) 発行する全部の株式について定款で譲渡制限を定めている会社 同族会社・中小企業の多く
大会社 最終事業年度の貸借対照表上で①資本金5億円以上または②負債総額200億円以上の会社(会社法第2条6号) 大手上場企業・大規模非上場企業
公開大会社 公開会社かつ大会社の両方に該当する会社 一般的な上場大企業
機関設計の制約——会社類型別の必須機関
会社類型 取締役会 監査役 監査役会 会計監査人
非公開・非大会社 任意 任意(取締役会設置なら原則必要) 任意 任意
非公開・大会社 任意 必要(会計監査人設置なら監査役も) 任意 必要
公開・非大会社 必要 必要 任意 任意
公開・大会社 必要 必要(または監査等委員会・指名委員会等) 必要(または委員会型) 必要

取締役・取締役会——権限と義務の整理

取締役の基本

取締役は株主総会で選任され、会社の業務執行を担います。取締役会設置会社では取締役会が業務執行の決定を行い、代表取締役が実際の執行を担います。

機関 員数・要件 主な権限・職務 特記事項
取締役 取締役会設置会社は3人以上。非設置会社は1人以上 業務執行・会社代表(代表取締役) 任期:原則2年(定款で短縮可、非公開会社は定款で10年まで延長可)
取締役会 取締役3人以上で構成。公開会社・監査役会設置会社等は設置義務 ①重要な業務執行の決定②代表取締役の選定・解職③取締役の職務執行の監督 議事録作成義務。定例・臨時の別あり
代表取締役 取締役会設置会社では取締役会で選定。非設置会社は全取締役が代表権 対外的な会社代表・日常業務の執行 複数選定可。取締役会で解職可
取締役会の専決事項(会社法362条4項)——定款でも株主総会でも委任できない事項
  • 重要な財産の処分・譲受け
  • 多額の借財
  • 支配人その他の重要な使用人の選任・解任
  • 重要な組織の設置・変更・廃止
  • 社債の募集に関する事項
  • 内部統制システムの整備に関する事項
  • 定款の定めによる取締役等の責任の一部免除

※ これらの事項は取締役会の専決事項であり、個別の取締役や委員会等に委任することはできません(一部例外あり)。

⚠️ 取締役の任期(非公開会社の延長)
非公開会社では定款により取締役任期を最長10年に延長できます(公開会社は2年)。中小企業では定款で任期を延長しているケースが多い。任期満了前の解任には「正当な理由なし」の場合損害賠償責任が発生する点も押さえてください。

監査役・監査役会——監査機能の核心

監査役の役割——「チェック機能」の担い手

監査役は取締役の職務執行を監査する機関です。業務監査と会計監査の両方を担いますが、大会社では会計監査人が会計監査を担い、監査役は主に業務監査に注力します。

機関 員数・要件 権限・職務 選任・任期
監査役 1人以上(監査役会設置会社は3人以上・半数以上が社外監査役) ①業務監査②会計監査③取締役会への出席・意見陳述④株主総会への報告 株主総会で選任。任期4年(定款で短縮不可、非公開会社は定款で10年まで延長可)
監査役会 3人以上(半数以上社外監査役)。公開大会社(監査等委員会等非設置)は設置義務 監査報告の作成・常勤監査役の選定・監査方針の決定 常勤監査役1人以上の選定が義務
監査役の独立性を確保する制度
  • 任期4年(取締役の2年より長い)→解任しにくくする
  • 監査役の選任・解任には監査役の同意が必要
  • 報酬は株主総会で取締役とは別に決議
  • 取締役会に出席し意見を述べる権限
  • 違法行為差止請求権
「社外監査役」の要件

社外監査役とは、①過去に当該会社・子会社の取締役・支配人等でない②当該会社の親会社・兄弟会社の取締役等でない③近親者が取締役でない——等の要件を満たす独立性の高い監査役です。監査役会設置会社では半数以上が社外監査役である必要があります。

⚠️ 監査役の任期は「4年」——取締役の「2年」と区別
監査役の任期は4年(短縮不可)、取締役の任期は2年(非公開会社は定款で10年まで延長可)です。監査役の任期が長いのは独立性を確保するため。この数字の違いは試験頻出です。

会計参与・会計監査人——会計の専門家機関

機関 資格要件 職務内容 設置
会計参与 公認会計士・監査法人・税理士・税理士法人 取締役と共同して計算書類(決算書)を作成する。計算書類を株主・債権者等が閲覧できるよう独自保存 任意(全ての株式会社で設置可)
会計監査人 公認会計士または監査法人のみ 計算書類・連結計算書類の監査。監査報告書の作成 大会社は設置義務。それ以外は任意
会計参与の特徴(中小企業向け)

会計参与は2005年の会社法制定時に創設された制度。中小企業が金融機関や取引先からの信頼を高めるために、専門家(税理士・公認会計士)が計算書類の作成に関与することを制度化。計算書類の信頼性を高め融資条件の改善等につながる効果が期待されます。

会計参与 vs 会計監査人の違い

会計参与:取締役と共同して計算書類を作成する(作成プロセスへの参加)
会計監査人:完成した計算書類を独立して監査する(第三者による検証)
役割が根本的に異なる点を覚えてください。

⚠️ 会計監査人は公認会計士・監査法人のみ(税理士は不可)
会計監査人になれるのは公認会計士または監査法人のみです。税理士・税理士法人は会計参与にはなれますが、会計監査人にはなれません。この区別は試験で問われます。

監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社——新しい機関設計

3つの機関設計タイプの比較
タイプ 監査機関 特徴 採用企業の特徴
監査役(会)設置会社 監査役・監査役会 最も伝統的な機関設計。監査役が取締役から独立した外部的立場で監査 日本の上場企業の多数派(特に中堅企業)
監査等委員会設置会社 監査等委員会(取締役で構成) 2015年会社法改正で創設。監査等委員は取締役(株主総会で別途選任)。社外取締役の活用促進 上場企業への移行が増加中
指名委員会等設置会社(委員会設置会社) 監査委員会(執行役から独立) 指名委員会・報酬委員会・監査委員会の3委員会。業務執行は執行役(CEOなど)が担当。経営の透明性・効率性重視 大企業・外資系・コーポレートガバナンス先進企業
監査等委員会設置会社のポイント
項目内容
監査等委員の構成3人以上の取締役(過半数が社外取締役)
任期2年(短縮不可)。他の取締役(1年)より長い
報酬他の取締役と区別して株主総会で決議
監査役との違い監査役ではなく「取締役」。取締役会の議決権を持つ
指名委員会等設置会社の3委員会
委員会権限構成
指名委員会取締役の選任・解任議案の株主総会提出の決定3人以上・過半数が社外取締役
報酬委員会取締役・執行役の報酬の決定3人以上・過半数が社外取締役
監査委員会取締役・執行役の職務執行の監査・監査報告の作成3人以上・過半数が社外取締役

非公開会社(中小企業)の機関設計——柔軟性の活用

中小企業に多い機関設計パターン

非公開会社(全株式譲渡制限会社)は機関設計の自由度が高く、最低限「取締役1人」だけで会社を運営することも可能です。

機関設計パターン 設置が必要な機関 対象・特徴
最小構成(取締役のみ) 取締役(1人以上)+株主総会 小規模な同族会社・個人事業に近い会社。監査役不要
取締役+監査役 取締役(1人以上)+監査役+株主総会 一般的な中小企業。監査役が業務・会計の両方を監査
取締役会+監査役 取締役(3人以上)+監査役+株主総会 成長企業・ガバナンスを整えたい企業
取締役+会計参与 取締役(1人以上)+会計参与+株主総会 計算書類の信頼性向上目的。監査役なしでも可
取締役会+監査役(会)+会計監査人 取締役(3人以上)+監査役(3人以上)+会計監査人 非公開大会社。大会社要件(資本金5億円以上等)に該当
⚠️ 非公開会社では「取締役会なし」が選択可能
非公開会社(全株式譲渡制限会社)では取締役会を置かないことができます。その場合、取締役全員が代表権を持ち(定款で代表取締役を定めることも可)、業務執行の意思決定も取締役が個別に行います。これは中小企業に多いパターンです。公開会社との大きな違いを確認してください。
取締役会がない場合の意思決定

取締役会設置会社でない場合(非設置会社)、業務執行の決定は取締役(複数いれば過半数の一致)が行います。重要事項は株主総会で決議できます。代表権は定款または互選で代表取締役を定めなければ取締役全員が持ちます。

コーポレートガバナンス——機関設計と企業統治

コーポレートガバナンスとは

コーポレートガバナンス(企業統治)とは、会社の経営が適切に行われるよう監視・管理する仕組みのことです。株主・経営者・その他利害関係者の利益を調整し、経営の透明性・公正性・効率性を確保することが目的。

ガバナンス強化の手段 内容 効果
社外取締役の選任 経営者から独立した外部の視点を持つ取締役 経営の客観的評価・不正防止・多様な視点
社外監査役の選任 独立性の高い外部の監査役 取締役との癒着防止・独立した監査
委員会型機関設計 指名・報酬・監査の3委員会設置 経営の透明性・社外取締役の機能発揮
内部統制システムの整備 コンプライアンス・リスク管理・情報管理体制 不正・リスクの防止・法令遵守
コーポレートガバナンス・コード(上場会社向け)

東京証券取引所が定めた上場会社向けのガバナンス原則(2015年策定・以降改訂)。「comply or explain(遵守か説明か)」原則に基づき、各原則を遵守するか、遵守しない理由を説明することを求めます。取締役会の独立性・多様性・社外取締役比率等を規定。試験では「概念と目的」を押さえればOK。

試験対策まとめ——機関設計の頻出論点整理

機関設計:会社類型別の設置義務まとめ
機関 設置義務のある会社 任意設置が可能な会社
株主総会 全ての株式会社 ——
取締役 全ての株式会社(1人以上) ——
取締役会 公開会社・監査役会設置会社・監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社 非公開会社
監査役 公開会社・会計監査人設置会社(一部例外あり) 非公開会社(一部条件)
監査役会 公開大会社(委員会型を除く) その他の会社
会計監査人 大会社・監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社 その他の会社
会計参与 なし(全て任意) 全ての株式会社
監査役・取締役の任期比較(試験頻出)
役職 公開会社 非公開会社(定款) 短縮・延長
取締役 2年 最長10年 短縮可・延長可(非公開のみ)
監査役 4年 最長10年 短縮不可・延長可(非公開のみ)
会計参与 2年 最長10年 取締役と同様
監査等委員(取締役) 2年 2年(短縮不可) 他の取締役(1年)と区別

よくある疑問——FAQ

Q1. 「公開会社」は必ず上場しているのですか?
違います。会社法上の「公開会社」は株式の一部に譲渡制限のない会社であり、上場の有無は関係ありません。非上場でも、一部株式に譲渡制限がなければ「公開会社」です。逆に、上場会社は全株式が自由に譲渡できるため、必ず公開会社に該当します。
Q2. 監査役と監査等委員会の違いは何ですか?
最大の違いは「監査役は取締役でない」「監査等委員は取締役」という点です。監査役設置会社では監査役が取締役から独立した外部的立場で監査します。監査等委員会設置会社では監査等委員という名の取締役が監査を行い、取締役会の議決権も持ちます。2015年会社法改正でコーポレートガバナンス強化のために創設されました。
Q3. 1人会社(取締役1人)で監査役は不要ですか?
非公開会社(全株式譲渡制限会社)かつ非大会社かつ取締役会非設置の場合、監査役の設置は任意です。つまり取締役1人だけで会社を設立・運営することは可能です。ただし取締役会を設置する場合は監査役(または監査等委員会)が必要になります。
Q4. 会計参与は小規模企業にも有効ですか?
非常に有効です。会計参与を設置することで、①専門家(税理士・公認会計士)が計算書類作成に関与→信頼性の向上②金融機関からの融資審査で有利③取引先からの信頼確保——などの効果が期待できます。監査役設置が任意の小規模会社でも利用でき、実務上コストに見合うケースが多いです。
Q5. 指名委員会等設置会社の「執行役」とは何ですか?
指名委員会等設置会社では業務執行を担う者を「執行役」と呼びます。取締役会が経営の監督に特化し、日常の業務執行は執行役(CEOなど)が担う仕組みです。執行役は取締役会で選任・解任されます。日本では大企業・外資系企業に多いコーポレートガバナンスの先進的な形態です。
Q6. 監査役は取締役会に出席しなければなりませんか?
監査役は取締役会に出席する権限(義務)があり、必要があれば意見を述べなければなりません(会社法383条)。また取締役が違法・不当な行為をしようとする場合は差止め請求権を持ちます。これらは監査役の独立性と実効性を確保するための権限です。
Q7. 「大会社」の要件(資本金5億円・負債200億円)はどちらか一方で該当しますか?
はい、どちらか一方を満たせば大会社に該当します(「または」要件)。資本金5億円以上でなくても、負債総額が200億円以上あれば大会社として扱われ、会計監査人設置義務が生じます。この「または」という点を見落とさないよう注意してください。
Q8. 取締役を途中で解任した場合、損害賠償は必ず発生しますか?
必ずではありません。「正当な理由」がある場合は損害賠償不要です(会社法339条2項)。正当な理由の例:不正行為・業務懈怠・心身の障害など。「正当な理由がない解任」の場合に初めて取締役から損害賠償請求が可能になります。なお株主総会はいつでも取締役を解任できます(解任自体は自由)。

会社法の機関設計は「公開/非公開」×「大会社/中小会社」の4類型を軸に、各機関の設置義務・権限・任期を整理することで一気に理解が深まります。試験では「どの会社にどの機関が必要か」「各機関の権限の範囲」を具体的に問う問題が頻出です。表を活用して繰り返し確認してください。

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この記事を書いた人

中小企業診断士試験勉強中のアラフィフシングルマザーです。
大学卒業後から現在まで、数々の失敗をしながらずっと自営業として試行錯誤を重ねてきました。
もっときちんと経営やビジネスの知識を身につけて、将来は他の事業者の方のお役にも立てたらいいな、と思うようになり、中小企業診断士の試験に挑戦中です。

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